錯誤無効〜動機の錯誤・要素の錯誤

民法・錯誤 無効〜動機の錯誤と要素の錯誤を理解する

 

 

 

法学部生向けに、民法の錯誤・無効について書いていきます(^^♪

 

 

※参考文献 民法T 内田貴 第4版

 

 

 

 

民法の錯誤無効を理解する

 

 

 

錯誤無効を考える前に、

 

 

まず、錯誤の伝統的な分類について整理しますね。

 

 

民法・錯誤 無効〜要素の錯誤と動機の錯誤

 

 

 

表示行為の錯誤

 

 

表示上の錯誤

 

これは簡単です。一株4万円と入力するところを、6万円と入力してしまったみたいな感じです。表示した行為に錯誤が起きていますね。

 

 

表示行為の意味に関する錯誤

 

 

分かりづらいので、例をあげてみますね。

 

参考

 

xは、鉛筆をまとめてほしかったので、Yに、鉛筆を10ダース配達するように頼んだ。10ダースは12×10=120だが、xは、1ダースが、7個入りだと勘違いしていた。

 

 

これは表示行為ではなく、表示行為の意味、1ダースが何個か?を勘違いしていたということですね。これが、表示行為の意味に関する錯誤です。

 

 

動機の錯誤

 

例えば、リンゴジュースを買いたいと思って、買ってきたが、実はすでに同じのが家にありました。みたいな時ですね。効果意思を発生させる前の錯誤が、動機の錯誤ですが、

 

 

動機の錯誤と表示行為の錯誤の判断がややこしいので、例をあげて動機の錯誤を整理してみます。

 

 

 

 

 

参考

 

古書の、収集家であるxは、民法典の起草者の一人が記した希少本を、古本屋Yで見つけ、大喜びで買った。

 

しかし、家に帰って書庫を見ると、同じ本がすでにあった。xはyに対して、本の売買は錯誤によるとして無効にできるのか?

 

この場合、表示行為はちゃんとなされています。(本を買いたいと相手に言う)

 

そして、効果意思=本を買いたい

 

もちゃんとあるので、この点に錯誤はありません。どこに錯誤があるのかというと、効果意思を発生させる過程、つまり、動機に錯誤があります。

 

 

よって動機の錯誤は、効果意思を発生させる過程に錯誤があることだといえます。

 

これに対し表示に対応する意思(効果意思)そのものがないのが、表示上の錯誤です。

 

 

効果意思の部分を錯誤した→表示上の錯誤がおきた

 

という感じです。

 

 

 

 

 

動機の錯誤・プロセス

 

 

民法・錯誤 無効〜要素の錯誤と動機の錯誤

 

 

 

 

 

表示行為の錯誤・プロセス

 

民法・錯誤 無効〜要素の錯誤と動機の錯誤

 

 

 

 

さて、ここまでで、抑えたら今度は条文を確認してみましょう。

 

 

民法95条

 

意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。

 

ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

 

 

 

要素の錯誤は無効と書いてありますね。つまり、民法95条が成立するには、

 

 

まず、要素の錯誤が必要になります。

 

 

 

で、ここで、問題になるのは、要素の錯誤って何か?ですね。

 

 

要素の錯誤

 

 

定義

 

要素の錯誤とは、因果関係と重要性を備えた錯誤である。(判例・通説)

 

 

因果関係 

 

その錯誤がなければ、表意者は意思表示をしなかっただろうということ

 

原因と結果の関係が必要と言うことです。

 

 

重要性
 

 

錯誤がなければ、意思表示しないであろうことが、通常人の基準から見ても、最もであるほどの重要な部分についての錯誤であること。

 

例えば、Aさんが、100円の商品を、99円と勘違いして買った場合、普通の人だったらそこまで大事ではないといいますよね。こういう場合は、重要な部分についての錯誤ではないので成立しません。

 

 

要件A

 

 

重大な過失

 

重大な過失と言うのは、錯誤に陥ったことにつき、通常人に期待される、注意を著しく欠いていることです。

 

著しい=ひどく、かなり

 

です。

 

民法・95条の効果

 

条文のとおり錯誤による意思表示は無効になります。

 

※無効というのは、意思表示をなかったものとしてあつかうということです。

 

 

錯誤・無効の主張

 

錯誤無効の、主張は、原則として、表意者のみができる

 

別に無効にしなくても良いんですね。何故なら錯誤を保護する本来の目的は表意者の保護にあるからです。

 

表意者が有効でもいいというなら、わざわざ保護する必要はないですよね。

 

 

錯誤が無効になるのはなぜ?

 

 

意思の欠缺があるから

 

 

意思の欠缺というのは、表示行為から、推測される効果意思が存在しない場合のことです。
欠缺=欠けていることです。

 

そして、民法は、意思がかけているからこそ、錯誤は無効であると考えています。(判例・旧通説)

 

 

つまり、動機の錯誤は、効果意思が存在すること、動機は効果意思を成す前提にすぎないことから、95条の錯誤において問題にはならないということになりますね。

 

 

 

 

動機の錯誤の除外

 

 

動機の錯誤は、95条の錯誤、つまり、要素の錯誤からは除外されます。これ、とても大事ですからしっかり理解しておきましょう。

 

例をあげて説明します。

 

 

Aは道路がとおって土地の値段が上がるという噂を信じて、しょぼい土地をBから、高額で買い取ったが、噂は、でたらめだった。Aは、錯誤無効を主張できるのか?

 

 

もし、この場合に錯誤・無効になったら、たまったもんじゃないですよね。誰も取引しなくなってしまいます(^_^;)

 

 

そこで、表意者(この場合はA)の保護より、取引の安全を優先することで、社会の要請にこたえる=動機の錯誤は、要素の錯誤(95条)のから除外

 

という話になります。

 

 

でも、例外もあります。

 

動機が意思表示の内容として、表示されたときは、要素の錯誤(95条の錯誤)となる資格がもらえます。

 

 

例えば、

 

自分はこの本をまだ持っていないから、一冊ほしいみたいに、動機の内容が相手に伝わっている場合です。

 

もし、動機に錯誤あり、本は持っていなかったとしても、

 

動機自体が、表示されて意思表示の内容になっているなら、相手は事情を知っているわけですから、取引の安全を害することはないという話になります。

 

だから要素の錯誤になる資格が与えらるんですね。

 

 

補足

 

法学部生だとここまで、抑えられればだいたいOKだと思いますが、以上の判例・旧通説には、非難の声があがっており、現在では、新しい考え方が多数説を構成しています。

 

勘の良い読者ならお気づきかもしれませんが、表示内容の意味における錯誤と、動機の錯誤の違いは説明してないんですよね。この辺の話の問題や、他にも旧学説には問題があります。

 

 

ですから、興味のある方や、法学部で教わった方は、旧学説の問題点と、新しい考え方を民法の参考書などで抑えてみるとよいですね(^^♪